根拠なき自信の正体
- 7 時間前
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「北辰の結果見て、自分ではどう思った?このままだと本当にマズいぜ」
入試の迫った11月の三者面談で、危機感MAXの私や保護者を尻目に、「がんばりま~す」と、まるで他人事のような顔で返してくる中3生徒。
「どうしてこの期に及んで危機感を持てないの?」
「現実の厳しさがまるで見えていないのでは?」
そうイライラしてしまう保護者の気持ちは痛いほどよく分かる。私も気持ちは同様だ。だが、実は子どもたちは、サボって現実を無視しているのでも、親を怒らせようとしているのでもないのかもしれない。脳の仕組み上、「データを見せられても、自分事として捉えられない」という深いワケがあるのだ。
心理学や行動経済学の世界には、『楽観主義バイアス』という言葉がある。
人間には、客観的なリスクをどれだけ突きつけられても、「悪いことは自分には起きない」「周りは落ちるかもしれないが、自分だけはなんとかなる」と、無意識に都合よく解釈してしまう脳のクセがある。特に中学生という時期は、客観的にリスクを推し量る脳の「前頭葉」がまだ発達途上だ。だから大人以上に、この「根拠のない自信」というバイアスが強力に働いてしまう。
さらに追い打ちをかけるのが、『ダニング=クルーガー効果』という心理現象だ。
一言で言えば、「知識や経験が足りない人ほど、自分の立ち位置を正しく認識できず、自分を過大評価してしまう」というもの。
しっかり勉強に取り組んでいる生徒ほど「自分の足りない部分」がよく見えるから、「やばい、時間が足りない」と焦る。すなわち健全な危機感が持てる。一方で、まだ本気で勉強に向き合っていない生徒は、厳しいデータを見せられても、それを恐怖として理解するための「ベースの経験値」が足りない。だから、偏差値の推移や合格判定の〇〇%という数字が、ただの「紙に書かれた記号」にしか見えず、脳をツルンと素通りしてしまうのだ。「来年の春、不合格になってガックリ肩を落としているリアルな自分の姿」をシミュレーションするだけの想像力(メタ認知能力)が、まだ育っていないのである。
だとすれば、親や教師がいくら口を酸っぱくして「この数字を見なさい!」「落ちるよ!」とデータで脅したところで、子どもの脳のディフェンス(バイアス)を突破することはできない。言葉による説得には最初から限界があるのだ。
「危機感を持たせてから、行動させよう」
私自身もずっとこう考えていた。だが、実はその順番ではうまくいかないのかもしれない。
「意識変革→行動」は理想だが、待てど暮らせど変革が起きないなら「行動→意識改革」のほうが有効ではないか、と。
「危機感がないまま」でいいから、まずは自習室に来て、決められた時間に机に向かう。目の前のテキストを、1ページ解く。「危機感が湧くのを待つ」のではなく、「まず環境を変え、行動させる」ことを徹底する。
実際に手を動かし、小さな「できた!」や「うわ、全然解けない……」というリアルな手応え(行動)を積み重ねていく。その泥臭いプロセスのなかで初めて、脳のバイアスがパカッと外れ、「あ、自分はここが足りないんだ」という本物の当事者意識(正しい危機感)が芽生え始める。
行動が先。危機感はその後からついてくればいい、というアプローチ。結果が出ないなら、まずはそこに追い込むことから始めてみてはどうだろう。
そこから逃げ出すようなら、どのみち結果など期待できないのだから。





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